脳だって疲れます
医学は日進月歩で進んでいますが、うつ病の原因はまだよくわかっていません。一般的にはセロトニンを中心とするモノアミン説が有名ですが、最近は脳細胞の炎症説も有力です。
モノアミン説というのは、「神経の接合部でセロトニンなどの伝達物質が少なくなってしまい神経細胞の興奮がうまく伝達されない」というようなことです。一般の人がこれをイメージするのは難しく、説明されても「?」で終わってしまうでしょう。
また、「うつ病は心の風邪」なんて言う人がいますが、そんなことはありません。患者さんにとってはとても深刻な病気です。今まで普通にできていたことができなくなってしまうのですから。それがどんなにつらいことか。おそらく世間の多くの人は、うつ病について間違った見識を持っていると思います。周囲の人がなかなか理解してくれないのもこの病気の特徴と言って良いでしょう。
私はうつ病の原因については次のようなイメージを持っています。
「脳細胞を酷使した結果、①細胞内外の炎症性変化、②エネルギー不足、③栄養素不足がおこり、脳全体の回復力が低下する。その変化の一部としてモノアミンの代謝に異常が生じる」
というものです。簡単に言うと、
「脳を使いすぎると疲れてしまい、うまく働かなくなる。そうすると脳のエネルギーや栄養が足りなくなり、悪い事ばかり考えてしまう。そして不安になり、また悩んで脳を使ってしまう」
のような事になりますか。簡単に言う事は難しい事ですね。
うつ病を心配している方だけではなく、体の症状が出ている方で
「こんなに具合が悪いのに、どこの病院に行っても異常がないといわれる」
と心配され苦しんでいる方も、脳の使い過ぎから体の症状が出ているのかもしれません。
これから書くことは、私が外来でうつ状態の方に最初にお話しすることです。しゃべれば20分ぐらいかかるお話です。全部書くとおそらくとても長くなります。具合が悪くても読めるようになるべく簡単に書きたいと思います。
一度に沢山読むと脳に負担をかけて疲れてしまいます。読んでいてつらくなるようならまずは休んでください。続きはゆっくり読んでください。