脳だって疲れます

医学は日進月歩で進んでいますが、うつ病の原因はまだよくわかっていません。一般的にはセロトニンを中心とするモノアミン説が有名ですが、最近は脳細胞の炎症説も有力になってきました。

モノアミン説というのは、「神経の接合部でセロトニンなどの伝達物質が少なくなってしまい神経細胞の興奮がうまく伝達されない」というようなことです。そうは言われても一般の人がこれをイメージするのは難しく、説明されても「?」で終わってしまいます。

患者さんが聞きたいことは、「なぜこうなったのか?」や「どうやったら治るのか?」という事ですが、正確に言うと「分からない」という事になります。しかし、これは他の病気についても同じで、原因が分かったり治療法が確立されている病気の方が少ないのです。例に挙げれば、腰痛や風邪がこれにあたります。こんなに身近でありきたりの病気なのに解明されていないのです。

うつ病、あるいはうつ状態はとても深刻な病気です。今まで普通にできていたことができなくなってしまうのですから。「心のかぜ」なんて言う人がいますが、そんなもんじゃありません。患者さんにとっては「心の肺炎」ぐらいの具合悪さがあります。命を失っても不思議ではない状態です。

そんなつらくひどい症状があるのに理由がわからないという事が不安を増大させ、症状がなかなか落ち着かない患者さんをたくさん診てきました。

私は医師という名の科学者であります。医学博士でもあります(エッヘン)。科学者は分からないことに対しては常に仮説を立て、観察し、常に検証の可能性を探っていくのです。そうして私は15年もうつ病を見つめ続けてきました。

現在、私はうつ病についてはある仮説を持っています。それは、

「脳細胞を酷使した結果、①細胞内外の炎症性変化、②エネルギー不足、③栄養素不足がおこり、脳全体の回復力が低下する。その変化の一部としてモノアミンの代謝に異常が生じる」

というものです。

簡単に言うと、

「脳を使いすぎると疲れてしまい、うまく働かなくなって悪い事ばかり考えてしまう。そして不安になり、また考えごとで脳を使う」

のような事になりますか。簡単に言う事は難しい事ですね。

うつ病を心配している方だけではなく、体の症状が出ている方で

「こんなに具合が悪いのに、どこの病院に行っても異常がないといわれる」

と心配され苦しんでいる方も、脳の使い過ぎから体の症状が出ているかもしれません。

これから書くことは、私が外来でうつ状態の方に最初にお話しすることです。しゃべれば20分ぐらいかかるお話です。全部書くとおそらくとても長くなります。具合が悪くても読めるようになるべく簡単に書きたいと思います。

一度に沢山読むと脳に負担をかけて疲れてしまいます。読んでいてつらくなるようならまずは休んでください。続きはゆっくり読んでください。